場所:秋田県の乳頭温泉郷
最寄駅:JR田沢湖線・田沢湖駅 など


「このところ温泉に関する記事がないですね」と、ある読者の方から言われました。久しぶりの温泉記事となりますが、今回は全工油の全国懇談会を開催した「乳頭温泉郷」について、次号と2回に渡っての紹介となります。

乳頭温泉郷は、秋田と岩手の県境に聳える乳頭連邦から、秋田県側に流下する先達川に沿って、「黒湯」・「孫六」・「蟹場」・「大釜」・「妙乃湯」・「田沢湖高原(休暇村)」、少し離れて「鶴の湯」の七つの温泉を総じています。それぞれが一軒宿で特有の趣を持っております。
乳頭温泉郷は、最近では九州の黒川温泉と並んで女性客に人気がある温泉となっています。
今回宿泊した「休暇村・田沢湖」は、「田沢湖高原温泉」と呼ばれ、ホテルや旅館が立ち並ぶ所は休暇村より約3km田沢湖寄りとなっており、ここは乳頭温泉郷からの引き湯となっていますが、「休暇村・田沢湖」は自噴の温泉で、泉質は単純硫黄泉(泉温:49.7℃、pH5.2)とNa-炭酸水素塩泉(泉温:52.7℃、pH6.5)です。まだ施設全体をリニューアルしたばかりなので新鮮さが満杯です。大自然に囲まれた露天風呂に入りながら、森林浴を楽しむことができます。

「黒湯温泉」は、乳頭温泉郷の最も奥に位置する温泉です。先達川の谷底に、年代を経た木造二階建ての母屋を中心に茅葺き屋根の建物が点在しています。源泉から湧き上がる湯煙に包まれた風情は、秘湯の趣が強いです。
浴室は、母屋と離れた男女別の浴場のほか、上ノ湯、下ノ湯、熱ノ湯の三ヶ所の浴場棟があり、上ノ湯は四本柱が杉皮葺きの屋根を支えるあずまや風で、露天風呂ムードが味わえます。木の樋から湯が落ちてくる「打たせ湯」も半露天で黒湯の名物にもなっています。泉質は硫化水素泉で、泉温は80℃です。なお、露天風呂は混浴であり、余計なものを身に付けないで裸のままで入るようにと注意書きがされています。(女性の水着などの着用は厳禁です)

「孫六温泉」は、黒湯から細い山道を先達川沿いに5分ほど下った所に建つ一軒宿です。明治の初め頃に孫六なる者が湯を発見し、川原に湯小屋を建てたのが始まりと伝えられています。建物は木造二階建てで、湯治棟、浴舎などが川沿いに並んでいます。浴室は内湯のほか、川原に簡単な小屋掛けの浴室が三ヶ所あり、大きな自然石をそのまま湯船にした石ノ湯や唐子ノ湯などがある。石ノ湯の隣の露天風呂は、石で囲った大きな湯船となっており、傍を流れる川のせせらぎを耳にしながらの入浴は野趣満点です。
泉質は単純硫化水素泉で、泉温は52〜77℃です。

「妙乃湯(たえのゆ)温泉」は、休暇村より約400m北西にあり、「金の湯」と「銀の湯」の二源泉を併せ持った一軒宿です。先達川を前にした露天風呂からの眺めは清々しく、川底から吹いてくる風は、入浴で温まった身体に対し何ともいえない清涼感を与えてくれます。
泉質は「金の湯」が茶褐色のNa-Ma硫化水素塩泉で、泉温は56.3℃(pH2.52)です。

そして「銀の湯」の泉質は無色透明な単純温泉で、泉温が41.9℃(pH6.5)です。こちらも女性客のためなのか?リニューアルしてかなり趣が変わりました。

「蟹場温泉」の名の由来は、温泉の湧出する付近の沢にサワガニが多く生息していたことから、
この名が付けられたと伝えられています。(今もサワガニは居るのですかね?)
浴室は男女別の木風呂、石風呂があり、それぞれ素朴な趣を凝らしています。
木風呂は薄暗い浴室で湯船も洗い場の床も厚い木で作られており、
木の樋からは多量の湯が湯船に流れ込み、湯船の中には湯葉のような湯の花が
プカプカと浮遊し、何ともいえない温泉の風情を醸し出させてくれます。
(これぞ温泉に入ったという実感が湧いてきます)
露天風呂は宿から50mも離れた谷間に造られている。
混浴ですが周囲は全くの自然境なので、それが当然というムードに浸ってしまいます。
泉質は単純硫化水素泉で泉温は53℃。
「鶴の湯温泉」は先達川の渓流沿いに湯煙を上げている乳頭温泉郷・乳頭七湯の中では
一つだけかけ離れた所の湯ノ沢の谷間にあり、乳頭温泉郷の中では最も古い温泉です。
「鶴の湯温泉」の開湯は元和元年(1615年)と伝えられ、
伝承「鶴の湯由来記」によりますと、寛永15年(1638年)5月に、
秋田藩主・佐竹義隆公が、寛文元年(1661年)には亀田岩城玄藩公も湯治に見えられたと
記されています。
古くは「田沢の湯」と呼ばれていましたが、傷ついた鶴が病を癒しているのを見つけた
土地の猟師・勘助が「鶴の湯」と名付けたのが始まりと伝えられています。
宿の佇まいは入口に二本の大きな門柱が建っており、
その奥には古い茅葺の木造の建物が両側に建っており、
一瞬、過去にタイムスリッブして時代劇映画に出てくる関所ではないかと
勘違いしてしまうほどです。
それもそのはず、その昔、藩主の警護の武士が詰めていたという茅葺の大きな長屋で、
300年前の佇まいをそのまま保存しているのです。
客室には囲炉裏が切られ、浴場は古い湯殿の趣を醸し出しています。
温泉は白湯、黒湯、中の湯の三つに分けられており、それぞれの泉質が異なっています。
白湯(美人の湯)は含硫黄-Na・Ca-塩化物・炭酸水素泉(硫化水素型)、
黒湯(子宝の湯)はNa-塩化物・炭酸水素塩泉、中の湯(目っこの湯)が
含重曹・食塩硫化水素泉です。
ここ数年来、「鶴の湯温泉」は老若男女を問わず人気が高まり、
温泉100選のベストテンでは鶴の湯の「露天風呂」が第1位に選ばれております。
少し離れた所に数年前に鶴の湯別館「山の宿」を開業させました。
300余年の歴史を醸し出す「鶴の湯温泉」は正に秘湯の中の秘湯です。
一度訪ねてみてはいかがでしょうか。
題名:N0.380『乳頭の 七つの秘湯は 一軒宿』
N0.381『人多く 秘湯の面影 薄くなり』
より